口腔がんの早期発見には定期検診が効果的
定期検診で見つけられるお口のトラブルは、虫歯や歯周病だけではありません。舌や歯茎など、お口の中の部位に発生する「口腔がん」もまた、歯科医院での定期検診で発見される病気のひとつです。その他の「がん」と同様に転移する恐れのある恐ろしい病気ですので、早期発見のためにも定期検診を利用しましょう。
名駅(名古屋駅)から徒歩5分の歯医者「興福歯科医院」では、口腔がんを発見した際、大学病院その他の医療機関と提携し、専門医の対応や判断が必要な場合は、それらの医療機関にご紹介します。
【当院と連携している「病診連携」の医療機関】
名古屋大学医学部附属病院 / 名古屋市大附属病院 / 中日病院
愛知学院大学歯学部附属病院 / 名古屋第一赤十字病院
国家公務員共済組合連合会 名城病院
独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター
「口腔がん」とは?
「口腔がん」とは、舌、舌の下、歯肉、頬粘膜(ほっぺたの内側)、上顎、下顎、上顎洞、唇など、お口のさまざまな部位で発生する「がん」のことを言います。一般的な口腔がんの特徴は、しこりを伴う潰瘍や腫瘤です。
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舌にできたがん | 上顎にできたがん | 唇にできたがん |
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日本における口腔がんの罹患率は、がん全体の約2%に過ぎません。しかしこれは血液腫瘍である白血病を上回る数値であり、直接生命に関わる重大な病気であることに違いありません。また、幸いにして最悪の事態は避けられたとしても、患部を切除するなどした結果、「食べる」「飲む」「話す」「呼吸する」などの重要なお口の機能が大きく損なわれ、 QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が著しく低下してしまう場合もあります。
口腔がんの原因はお口の中の環境不良
口腔がんを引き起こす最大のリスク要因は、タバコです。喫煙者の口腔がん発症率は非喫煙者の約7倍、口腔がんでの死亡率は約4倍と言われています。次いで危険度の高いリスク要因となるのが、飲酒です。さらに飲酒をしながらの喫煙は、タバコに含まれる発がん性物質がアルコールに溶けて口腔粘膜に作用するため、よりリスクが高まると考えられています。特に50歳以上の男性で、飲酒喫煙の習慣がある人は極めて注意が必要です。
そのほかのリスクでは、
- ブラッシングなどをあまりせず口腔内が不潔
- 虫歯を放置している
- 合わない入れ歯や破れた歯の詰め物・被せ物などで慢性的な刺激を受けている
- 偏食による栄養不良で口の中が荒れている
といった口腔内の悪環境が口腔がんを招くとも考えられています。
金属アレルギーなども原因と言われていますが、がんはさまざまな要因が絡むため、はっきりとは分かっていません。できるだけ飲酒喫煙を控えるとともに、バランスの良い食生活を心掛け、口腔内を清潔に保ち、定期的に歯医者にかかり専門的なクリーニングを受けましょう。
口腔がんの初期症状
腫瘍が少し大きくなると、硬いしこりとなって現れます。見て分かる場合もあれば、触ってみると分かる場合もあります。また、がんが周囲の細胞に広がっていくことで、小さなただれや痛み、「食事中にしみる」「ヒリヒリする」といった症状がみられることもあります。
口腔がん(特に舌がん)は首のリンパ節へ転移するケースが多いので、首のリンパ節の腫れや首のしこりにより発見されるケースもあります。初期段階では口内炎や歯周病と間違いやすく、病院にかからず放っておくケースも少なくありません。触ってみて明らかに硬いしこりが感じられる場合はがんである可能性が高いので、まずは口腔外科や歯科医院を受診することをおすすめします。
口腔がんになるかもしれない症状「前癌病変」
お口の中には、「現時点では癌ではないけれど将来癌になりやすい病変」が発生することがあります。これを「前癌病変」と言い、舌や歯茎が赤や白に変色するといった症状がみられます。前癌病変の種類はさまざまですが、「白板症」や「紅板症」「扁平苔鮮」といったものが代表的です。
白板症
舌や歯肉、頬粘膜などの角化が進み、白く変化したものが「白板症」です。こすっても汚れが取れない白色の病変のうち、細菌による汚れ、カンジダ菌、噛み傷、凍傷など原因が明らかでないものが「白板症」にあたります。がんになるケースは少数ですが、心当たりがある場合には歯科医院で診断を受けましょう。
紅板症
血管が拡張し、粘膜が赤くなっている状態を言います。手や刺激物が触れると痛むケースがほとんどで、表面はツルッとした鮮やかな赤色ですが、中には隆起やただれがみられる病変もあります。もっともがんになりやすい前癌病変であり、すでに「上皮内がん」に変化しているケースもあるため要注意です。
扁平苔鮮
粘膜が角質のように硬くなる炎症性の病変です。線状や網目状に白色が走り、周囲が赤くただれます。辛いものや熱いものがしみる、ブラッシングするとすれて痛む、出血するといった症状がありますが、中には自覚症状がまったくないケースもあります。がん化することは極めて稀とされていますが、がんになった患者さんの報告もあるため 充分な経過観察が必要です。
「前癌状態」にも注意
- 「前癌病変」とよく似た言葉に、「前癌状態」というものがあります。前癌状態は、がんになる可能性が明確に高くなった状態を言い、「梅毒性口内炎」や「口腔扁平苔癬」「口腔粘膜下線維腫症」「Plummer-Vinson症候群」などが該当します。前癌状態や前癌病変に喫煙や飲酒などの刺激が慢性的に加わると「がん化」しやすくなるため、これらの習慣の中止と、医療機関での経過観察が必要です。
早期発見とセルフチェック
口腔がんは、早期に発見することができれば、他のがんと同様に極めて治癒率が高くなります。早期治療に成功すれば、手術後の不便(「食べにくい」「飲みにくい」「話しにくい」「呼吸しにくい」など)も最小限に抑えることが可能です。
体の中と違い、お口の中は鏡などを使えば誰でも簡単に見ることができます。口腔がんは早期発見が比較的容易ながんであると言えるので、ブラッシングの際などに注意してお口の中を観察するクセを付けるといいでしょう。
セルフチェックの方法
明るい光のある場所で鏡を用意し、入れ歯をしている場合は外しておきます。
確認すべきポイント
- 治りにくい傷がないか
- 粘膜のただれや赤い斑点がないか
- こすっても取れない白い斑点がないか
- まわりの正常な組織との境界がはっきりしない
- しこりや腫れ、できものがないか
確認の手順
1.指で唇を引っ張り、下唇の内側や前歯の歯肉をチェック
2.頭を後ろにそらし、上顎をチェック
3.頬を指で引っ張り、上下の奥歯の歯肉と頬の内側をチェック
4.舌を前に出し、舌の表面と左右の裏側をチェック
何より大切なことは、早期発見・早期治療です。治りにくい傷やしこり、腫れなどを「そのうち治るだろう」と放置したり、見過ごしたりしないようご注意ください。セルフチェックを行った結果、
万が一気になる症状がみられた場合は、早めに歯科を受診しましょう。口腔がんは口内炎と間違えやすいため、注意が必要です。