口腔がん CANCER

口腔がんとは

口腔がんとは

口腔がんは、お口の中のさまざまな部位で発生するがんのことです。舌や舌の下側、唇、頬の内側、歯肉、上下の顎、上顎洞などに起きる可能性があります。
ほかのがんと同様に重大な病気であり、最悪の事態を避けられたとしても、患部の切除などにより「食べる」「話す」「呼吸をする」といった口腔機能が損なわれることがあります。
口腔がんは、初期段階では口内炎や歯周病と間違えやすくなっています。触ってみて明らかに硬いしこりが感じられる場合は、歯科医院や口腔外科を受診することをおすすめします。

口腔がんのできる場所

「口腔がん」とは、舌、舌の下、歯肉、頬粘膜(ほっぺたの内側)、上顎、下顎、上顎洞、唇など、お口のさまざまな部位で発生する「がん」のことを言います。一般的な口腔がんの特徴は、しこりを伴う潰瘍や腫瘤です。

  • 舌にできたがん

    舌にできたがん

  • 上顎にできたがん

    上顎にできたがん

  • 唇にできたがん

    唇にできたがん

日本における口腔がんの罹患率は、がん全体の約2%に過ぎません。しかしこれは血液腫瘍である白血病を上回る数値であり、直接生命に関わる重大な病気であることに違いありません。また、幸いにして最悪の事態は避けられたとしても、患部を切除するなどした結果、「食べる」「飲む」「話す」「呼吸する」などの重要なお口の機能が大きく損なわれ、 QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が著しく低下してしまう場合もあります。

口腔がんの原因はお口の中の
環境不良

口腔がんの原因はお口の中の環境不良

口腔がんを引き起こす最大のリスク要因は、たばこです。喫煙者の口腔がん発症率は非喫煙者の約7倍、口腔がんでの死亡率は約4倍といわれています。
次いで危険度の高いリスク要因となるのが、飲酒です。飲酒をしながらの喫煙は、たばこに含まれる発がん性物質がアルコールに溶けて口腔粘膜に作用するため、よりリスクが高まると考えられています。50歳以上の男性で飲酒喫煙の習慣がある方は、特に注意が必要です。

そのほかのリスクでは、

  • 歯磨きなどをあまりせず、お口の中が不衛生になっている
  • 虫歯を放置している
  • 合わない入れ歯や破損した詰め物・被せ物などにより慢性的な刺激を受けている
  • 偏食による栄養不良で口の中が荒れている

といった、口腔内の悪環境が口腔がんを招くとも考えられています。

金属アレルギーなども原因といわれていますが、がんはさまざまな要因が絡むため、はっきりとはわかっていません。できるだけ飲酒喫煙を控えるとともにバランスの良い食生活を心がけ、お口の中を清潔に保ち、定期的に歯科医院でクリーニングを受けましょう。

口腔がんの早期発見には
定期検診が効果的

口腔がんの早期発見には定期検診が効果的

定期検診で見つけられるお口のトラブルは、虫歯や歯周病だけではありません。舌や歯肉など、お口の中の部位に発生する「口腔がん」もまた、歯科医院での定期検診で発見される病気のひとつです。その他の「がん」と同様、転移する可能性がある恐ろしい病気なので、早期発見のためにも定期検診を利用しましょう。

口腔がんに
なるかもしれない症状
「前がん病変」

お口の中には「将来がんになりやすい病変」が発生することがあります。これを「前がん病変」といい、舌や歯肉が赤や白に変色するといった症状が見られます。前がん病変の種類はさまざまですが、代表的なものとして「白板症」や「紅板症」「扁平苔鮮」といったものがあります。

白板症

舌や歯肉、頬粘膜などの角化が進み、白く変化したものが「白板症」です。こすっても汚れが取れない白色の病変のうち、細菌による汚れ、カンジダ菌、噛み傷、凍傷など原因が明らかでないものが「白板症」にあたります。がんになるケースは少数ですが、心当たりがある場合には歯科医院で診断を受けましょう。

白板症

紅板症

血管が拡張し、粘膜が赤くなっている状態を指します。手や刺激物が触れると痛むケースがほとんどです。表面はツルッとした鮮やかな赤色ですが、中には隆起やただれが見られる病変もあります。最もがんになりやすい前がん病変であり、すでに「上皮内がん」に変化しているケースもあるため注意が必要です。

紅板症

扁平苔鮮

粘膜が角質のように硬くなる炎症性の病変です。線状や網目状に白色が走り、周囲が赤くただれます。辛いものや熱いものがしみる、歯を磨くとすれて痛む、出血するといった症状がありますが、中には自覚症状がまったくないケースもあります。がん化することはきわめて少ないとされていますが、がんになった患者さまの報告もあるため、充分な経過観察が必要です。

扁平苔鮮

「前がん状態」にも注意

「前がん病変」とよく似た言葉に「前がん状態」というものがあります。前がん状態は、がんになる可能性がより明確に高くなった状態を指します。「梅毒性口内炎」や「口腔扁平苔癬」「口腔粘膜下線維腫症」「Plummer-Vinson症候群」などが該当します。前がん状態や前がん病変に喫煙や飲酒などの刺激が慢性的に加わると「がん化」しやすくなるため、これらの習慣の中止と、医療機関での経過観察が必要です。

早期発見とセルフチェック

口腔がんは早期に発見することができれば、ほかのがんと同様に治癒率がきわめて高くなります。早期治療に成功すれば手術後の不便(食べにくい、飲みにくい、話しにくい、呼吸しにくいなど)も抑えることが可能です。

体の中と違い、お口の中は鏡などを使えば誰でも簡単に見ることができます。口腔がんは早期発見しやすいがんであるといえるので、歯磨きのときなどにお口の中を観察する癖をつけるといいでしょう。

セルフチェックの方法

明るい光のある場所で鏡を用意し、入れ歯を使っている場合は外しておきます。

確認すべきポイント

  • 治りにくい傷がないか
  • 粘膜のただれや赤い斑点がないか
  • こすっても取れない白い斑点がないか
  • まわりの正常な組織との境界がはっきりしない
  • しこりや腫れ、できものがないか

確認の手順

  • 指で唇を引っ張り、下唇の内側や前歯の歯肉をチェック
  • 頭を後ろにそらし、上顎をチェック
  • 頬を指で引っ張り、上下の奥歯の歯肉と頬の内側をチェック
  • 舌を前に出し、舌の表面と左右の裏側をチェック

何より大切なことは、早期発見・早期治療です。治りにくい傷やしこり、腫れなどを「そのうち良くなるだろう」と放置しないようご注意ください。セルフチェックの結果、もし気になる症状が見られた場合は、早めに歯科を受診しましょう。口腔がんは口内炎と間違えやすいため、注意が必要です。

「地域連携」で
口腔がんに対応します

当院では口腔がんを発見した場合、大学病院やそのほかの医療機関と連携して適切な分析を行ないます。このような地域連携により、迅速に次のステップへ進めるようにサポートすることが可能です。専門とする医師の対応や判断が必要とされる場合には、より適した医療機関をご紹介します。
一例として、下記の医療機関と提携しています。

  • 名古屋大学
  • 名古屋第一赤十字病院
  • 名古屋市立大学
  • 名古屋医療センター
  • 名城病院
  • 藤田医科大学ばんたね病院

口腔がん治療にともなう一般的なリスク・副作用

  • 自費(保険適用外)での診療となる場合は、保険診療よりも高額になります。詳細は歯科医師にご確認ください。
  • 治療は当院だけで完結するものではありません。適切な分析を行なえるよう、当院以外の大学病院や医療機関をご紹介しています。
  • 症状や治療内容によっては保険を適用できますが、機能性や審美性を重視するため、基本的には自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
  • 治療内容によっては手術が必要となり、手術後、歯肉・顎などの炎症・疼痛・腫れ、組織治癒の遅延などが現れることがあります。
  • 治療内容によっては手術が必要となり、手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気などの副作用が現れることがあります。